柴田保之先生×藤田一照先生対談 「指筆談~知的障害者、重度・重複障害者との高度な対話を可能にする技術~」サンガ新社セミナー(オンライン参加&会場現地参加)

知的障害者、重度・重複障害者との高度な対話を可能にする技術

サンガ新社セミナー(オンライン参加&会場現地参加)
柴田保之先生×藤田一照先生対談
「指筆談:知的障害者、重度・重複障害者との高度な対話を可能にする技術」

【開催日】
2023年10月30日(月)

【時間】
開場18:30/開演19:00(終演21:00)

【会場】
國學院大學院友会館(東京・渋谷)3階 大会議室
住所 〒150-0011東京都渋谷区東4-12-8 

アクセスマップ

渋谷駅 徒歩15分/恵比寿駅 徒歩15分 國學院大學渋谷キャンパス側

※渋谷駅を渋谷警察方向にでて、氷川神社、國學院大學方向に進む。國學院大學と広尾高校のあいだあたり。
※渋谷駅からは都営バス学03系統より國學院大學前または東4丁目下車(バス約8分、徒歩3分)
※恵比寿駅からは都営バス学06系統より東4丁目下車(バス約8分、徒歩2分)

グーグルマップ

【講師】
柴田保之(國學院大學人間開発学部教授)
東京大学大学院教育学研究科単位取得退学

藤田一照(曹洞宗僧侶)
東京大学大学院教育学研究科中退

【参加費】
オンライン参加(見逃し配信付):3,500円
会場現地参加(見逃し配信付):5,000円(定員40名)

【チケットサイト】
https://peatix.com/event/3733957

障害教育の世界と禅の世界、それぞれの第一線で新たな地平を開拓するお2人の対談です。

ともに東京大学教育学部教育心理学科で学び、先輩後輩の関係にありますが、その後歩みを進めた道は異なります。

先輩である藤田一照先生は大学院時代に出会った禅の道に進み、現代の禅僧の新たな姿を開拓しておられます。一方の柴田保之先生は障害教育に進まれ、障害当事者のコミュニケーション方法として介助付きコミュニケーションを研究。当事者の言葉を通訳する「指筆談」を開拓しておられます。

今回のお2人の対談では、大きく2つのことをテーマとして考えたいと思っています。

ひとつは、同じ学問を学んだことなどの対話を入り口にして、障害とは何か、障害者教育や福祉とは何か、障害を含めた人間像(それはインクルーシブな社会の前提となるはずです)への平易な扉を開けていただくこと。

2つ目は、柴田保之先生が開拓している「指筆談」とはどのようなものか、その可能性と問題点を、忌憚なくお話しいただきたいと思っています。

今はごく一部の人にしか知られていない「指筆談」は、学問的にはまだ評価が定まらず、メディアなどからの批判にさらされてもいます。一方で、通訳を介したコミュニケーションを実際に経験すると、その真実性と心の深い洞察から発せられる言葉に胸を打たれます。ここには多くの可能性があるのではないか。障害教育、「指筆談」コミュニケーションを通して、新しい人間像の可能性を考え、イメージする契機としたいと思い、企画させていただきました。

サンガ新社では、柴田保之先生と早稲田大学人間科学学術院教授の熊野宏昭先生とのご対談「言語と意識の深層」において「指筆談」を話題とし、熊野宏昭先生の対談集『瞑想と意識の探求』(サンガ新社、2022年)に収録しました。今回は藤田一照先生との公開対談で、さまざまな角度から検討していきたいと考えています。

■相模原津久井やまゆり園障害者殺傷事件に関連して

2016年7月26日に起きた相模原津久井やまゆり園障害者殺傷事件。19人の方が亡くなり、職員2人を含む26人の方が重軽傷を負いました。犯行に及んだ植松聖(現・死刑囚)の犯行動機が社会に衝撃を与えました。

植松は、意思疎通の取れない人を「心失者」と呼び、意思疎通できない人間は生きる価値がなく安楽死させるべきだと主張しました。犯人がなぜそのような考えを持つに至ったかなど、事件の真相が明らかにならないまま死刑判決は下され、植松は再審請求中です。そして今、この事件を題材とした辺見庸の小説『月』を原作とした映画『月』(監督:石井裕也)が公開されています。

この事件は社会に投げかけた問題があまりに大きく、差別を内在化している社会と我々の意識をあぶり出す契機として捉える面が強いようです。そのために、裁判では明らかにならなかった植松の思想に焦点があてられ、我々の社会のゆがみや普段は見えないが何かあれば顔を出す内在化されている差別意識をあぶり出す契機として、教訓を得ようというとらえ方が強いようです。

犯人の使った「意思疎通ができない」という表現。これは一方的に植松が言っただけです。それは客観的な事実でしょうか。その検証がされないまま、犯人の勝手な断言である言葉が流布することで、ともすると「意思疎通のできない障害者」が、この問題を扱うときの前提となってしまっているのではないでしょうか。

國學院大學の柴田保之教授は重度障害とされる人々のコミュニケーションを研究してきました。その中でコミュニケーションのツールとしてパソコンや文字盤を使っての方法を開発してきた。そして現在、たどり着いたコミュニケーションの方法が「指筆談」です。

2018年には、柴田教授が事件後のやまゆり園で「指筆談」に取り組み様子が毎日新聞で取り上げられましたが、いまだ社会的に認知されるには程遠い状況といえるでしょう。

「津久井やまゆり園 柴田教授が取り組む「指筆談」広がりの兆し 職員手応え」2018/8/9 毎日新聞

今回の対談企画では、そうした現実を踏まえ、さまざまな角度から「指筆談」という技術の可能性を考えていきたいと思います。


当事者活動の会として2014年から活動する「きんこんの会」で指筆談で通訳をする柴田保之先生(2019年9月28日撮影)

【プロフィール】

柴田保之(しばた・やすゆき)

國學院大學人間開発学部初等教育学科教授。1958年、大分県生まれ。東京大学教育学部教育心理学科を卒業後、同大学大学院教育学研究科単位取得退学後、1987年より國學院大學に勤務。専門は、重度・重複障害児の教育、知的障害者の社会教育の実践的研究。(公財)重複障害教育研究所において中島昭美氏のもとで実践的研究に携わる。また1981年より、町田市障害者青年学級にスタッフとして関わる。2016年「介助つきコミュニケーション研究会」を発足。障害児・者との根本的な関係の見直しをしている。主な著書に『みんな言葉を持っていた:障害の重い人たちの心の世界』(オクムラ書店)、『沈黙を越えて:知的障害と呼ばれる人々が内に秘めた言葉を紡ぎはじめた』『社会に届け、沈黙の声:知的障害と呼ばれる人々が語る、津久井やまゆり園事件、出生前診断、東日本大震災』(以上、萬書房)他がある。熊野宏昭氏(早稲田大学人間科学学術院教授)との対談「言語と意識の深層」が『瞑想と意識の探求』(熊野宏昭[著]、サンガ新社)に収録されている。

藤田一照(ふじた・いっしょう)

禅僧。1954年愛媛県生まれ。東京大学教育学部教育心理学科を経て、同大学大学院教育心理学専攻博士課程を中途退学し、1983年兵庫県安泰寺(曹洞宗)にて出家得度。1987年よりアメリカのマサチューセッツ州にあるパイオニア・ヴァレー禅堂の住持(住職)として渡米。同禅堂で坐禅指導を行うほか、近隣の大学や瞑想センターで講義やワークショップを行う。2005年帰国。曹洞宗国際センター所長(2010~2018年)。主な著書に『現代坐禅講義:只管打坐への道』(角川ソフィア文庫)、『ブッダが教える愉快な生き方 (教養・文化シリーズ NHK出版学びのきほん)』(NHK出版)、『禅の教室:坐禅でつかむ仏教の真髄』(伊藤比呂美氏との共著、中公新書)、訳書に鈴木俊隆『[新訳]禅マインド ビギナーズ・マインド』(PHP研究所)他がある。

主催:株式会社サンガ新社
https://samgha-shinsha.jp/wp/